自由の人 [戻る]'95.8.25.発売 1. 12:15 P.M. -At Bryant Park- 全作詞、作曲、編曲:三谷泰弘 参加ミュージシャン ■esqの記念すべきデビュー・アルバム。 全曲解説esq "自由の人"
複雑に絡み合った現代社会の中で「自由」であるということはどういう事なのか?。個人がそれぞれの役割、責任を果たしつつ、社会の中で独立した存在であり続けることの重要性、その意味をメインコンセプトに掲げた、esqのデビュー・アルバム、"自由の人" 。 M-1...12:15P.M. -At Bryant Park- M-2...もっとそばに M-3...So long M-4...It's only love M-5...週末の天使 M-6...Sunny afternoon M-7...Evil eyes −悪意− M-8...もう一度愛せたら M-9...Party's Up! M-10...2 o'clock samba M-11...I think,you think M-12...飛翔 -Fly away- 音楽をスタートし、プロ・ミュージシャンを目指しはじめた14歳の頃からずっと夢見てきたソロ・アルバム。それがこのようにベストの形で、完全なるセルフ・プロデュースで完成出来たことをとてもうれしく思っています。このアルバムを聴く事をもっとも心待ちにしてきたのは、誰よりも僕自身なのです。 esq 三谷泰弘 |
ジャンボリー
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Episode Vol.1 [戻る]
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One And Only [戻る]
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Gems ~'95 to '98~ [戻る]
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Tailor-made [戻る]
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Episode Vol.2 & Vol.3 全曲解説 [戻る] ぼくらの時代のスタンダード・ナンバーたち ====================================================
今回は500人ほどのキャパシティのホール(埼玉、エローラホール)のステージ・センターにピアノをおき、3日間、自分でテープレコーダーのRec
ボタンを押しながら、たった一人で弾き語りのレコーディングを行いました。歌もアコースティック・ピアノもいっぺんに録音してしまう、いってみれば"お客さんのいないライブ・レコーディング"。 選曲してみると全体を通して、ぼくが育ってきた時代、影響を受けてきたアーティスト、楽曲がバランスよくならび、今までの一般的な認識とはまたひと味違う、ぼくなりの「スタンダード・ナンバー」が揃ったように思います。でもそれは決して独りよがりで自己満足的な内容ではなく、同世代の洋楽を中心に聴いてきた人には納得していただけるものとなりましたし、初めて聴くという人たちにも十分楽しんでいただける、時代を超えて生き延びるだけの情熱と美しさを備えた、素晴らしい曲たちが集まったと思っています。 また、バンド・アレンジが主体のアルバムと、弾き語りを中心としたライブ、こうしたesq のアルバムとライブの音的なギャップを埋める、という意味でもVol.1 よりもさらに意味のある作品になったように思います。ライブの空気感をそのままアルバムにしたような、今回のEpisodeシリーズは、どんな世代の方にも聴いてもらえる、自信作です。 Episode Vol.2瞳の中の天国 ■今回の2枚のアルバムを選曲する際に、春夏編をスタートする曲として真っ先に思い浮かんだのがこの曲。曲と詞のバランスがとても自然で、自分でも気に入っている曲のひとつ。ライブではこのアレンジで何度も歌っていたのだが、こうしてオリジナルな形でアルバムに残せたのがうれしい。 Surf's Up ■「20世紀でもっとも美しい音楽」とレナード・バーンスタインが語ったと言われる伝説の曲。作為やテクニックではとても思いつかないであろうコード進行や、複雑だがきわめて自然に聞こえる曲の構成が本当に素晴らしく、まさに天才が生みだした作品だと思う。幻想的な歌詞の世界観がさらに曲の深度を深めている。「Episode Vol.1」の時にも録音したのだが、歌にどうしても納得がいかず、今回のセッションではまずこの曲を完成させることが最初の課題だった。 月影のスローダンス ■10代から20代後半ぐらいまで、'50〜'60年代のハリウッド・ミュージカル映画に熱中していた。そうしたぼくの趣味は当時のスターダスト・レビューのアカペラの選曲にも表れていたのだが、なんとかオリジナルでもミュージカル的なテイストを生かした曲を書きたい、といつも思っていた。山口ともさんと二人、スプーンとカスタネットで「チャ、チャ」とやっている音がとても気持ちよく、レコーディングには妙な楽しさがあった。 プールサイド ■「South Of The Border」は詞、曲、アレンジ、演奏、歌唱、トータルのプロデュース・ワークと、すべてが高いレベルで融合された名盤だと思う。そのアルバムがリリースされた頃、ぼく自身がちょうど日本語で曲を作り始めた時期であり、詞が思うように書けず、ずっと悩みの種だった。この時期の来生えつこさんの詞は情緒があるのに乾いていて、本当に素晴らしく、独特な言葉の選び方などに大きく影響を受けた。こんなに美しい幻を、いつまでも見続けていたいものだと思う Genevieve ■日本で正当な評価がないアンドリュー・ゴールドだが、'70年代の彼の作品は本当に大好きだった。達郎バンドで知り合った佐橋さんもアンドリュー・マニアで、すっかり意気投合、ぜひ彼にギターを弾いてもらおうと思いついた。細かいピアノのフレーズや、ギター・ソロもあえてオリジナルそっくりに演奏しているのも、ファン気質の表れと理解していただきたい。 Disney Girls ■カバー曲のうち、ソロになってからレパートリーにした曲もあれば、アマチュア時代からずっと歌い続けている曲もある。この曲は後者の典型。自宅のピアノで何度歌ったかわからないぐらい。コーラスアレンジもまさに、ブルース・ジョンストン的。数多くのカバー・バージョンがある曲だが、たぶん「Going Public」の中のバージョンにもっとも似ているのでは、と自慢してしまうのも、これまたファン気質であります。 Burn Down The Mission ■エルトン・ジョンの曲もまさに昔からの弾き語りのレパートリーだったのだが、この曲は弾き語りタイプの曲ではないのでこれまで歌ったことはなかった。佐々木久美さんと共にライブをやったときに初めて選曲、良い感じではまったので、ライブでの定番曲になった。その久美さんのオルガンに加え、山口ともさんのパーカッション、そして一人で多重録音したクワイヤー(教会の合唱隊)風のコーラス(&手拍子24回分!)で、後半はひたすら盛り上がっていく。もちろんこれも最初はたった一人での録音だが、一番最初に歌った、荒さが残るが熱いテイクを何度やっても越えられず、結局Take 1を採用することに。 抱きしめよう
■ライブでは最初からずっと、アルバムでのアレンジと違う、このスタイルで演奏し続けている。サックスの山本公樹さんとのコンビネーションもほとんどあうんの呼吸で、自分たちでも別々に録音したとは思えないほど、ぴったりはまっている。 地球は狭くなりました ■中学の時、自分のラジオを手に入れて自分で音楽を選んで聴き始め、最初にファンになったのがオフコース。女子大生ばかりの客席に混じり、照れくさい気持ちで、まだオフコースが2人の時代の、デビュー・コンサートを見に行った中学生時代が懐かしい。発売日に手に入れたデビュー・アルバムの中に入っていたこの曲は、歌詞の世界観もとっても'70年代的で、あの時代がよみがえり、甘酸っぱい気持ちになってしまう。 We've Only Just Begun
■カーペンターズの最盛期だった'70年代前半、いやでも耳に入ってくるカレンの歌はあまりにクリーンすぎて、どうも好きになれなかった。今になって聴いてみるとボーカルとしての完成度は本当にすごい。この曲を選んだのは、一番彼ららしい曲だと思ったのと、リチャードの、まるでエアコンの風のような、人工的に涼しい感じの一人多重コーラスを再現したかったから。 夏の女王 (Dedicated to Esther Williams) ■スタレビ時代に作品として残した中で、レコーディングして、アルバムに残っている最終的な完成形に心残りがある曲が何曲かあって、この曲もそのうちの一つ。きっといつか、ちゃんとやり直したいと思い続けていた。飯塚昌明さんの美しいオブリガートと、山口ともさんのおしゃれなパーカッションのおかげもあって、すっかり満足できる出来となった。 Will You Love Me Tomorrow ■女性の歌であるこの名曲を取り上げるにあたり、女性の声が欲しいと思っていた。ライブで佐々木久美さんに一緒に歌ってもらった良さを再現できたらと思い、お願いしたが、予想以上の出来になりとてもうれしい。オルガンとボーカルがまったく同一線上にある、久美さんのソウルフルなミュージシャン・シップが感じられると思う。 Summer Soft ■'70年代、まさに魔法のように傑作を生む続けたスティービー・ワンダー。その最高傑作といわれるアルバムからの選曲。これがうまく録音できたときは本当にほっとした。それぐらい、コードも歌も難しい曲。 Episode Vol.3One More Time ■秋冬編の1曲目はかなり迷って、あれこれスタレビ時代の曲を歌ってみたのだが、一番フィットしたのがこの曲だった。佐橋さんの提案によるガット・ギターが実に暖かく、この曲の世界を拡げてくれたと思う。地味ながら自分で演奏したシェーカーもいい感じ。苦労しましたが。 Losing Myself In You ■スティーブン・ビショップも大好きなシンガー=ソング・ライターのひとり。それに彼の歌のキーはちょうどぼくの歌のレンジとぴったりで、歌っていても本当に気持ちがいい。長年待ち続けた初めての来日ライブで、この曲を歌われたときには涙が止まらず、恥ずかしかった。それぐらい思い出の深いアルバム。佐橋さんのアコースティック・ギターと共に、マイケル・マクドナルドのコーラスを模した我が一人多重コーラスにもご注目。 It's Only A Paper Moon ■スタレビ時代にスタンダード・ナンバーを数多くカバーしたが、この曲もその頃からのレパートリーのひとつ。公樹さんの紹介で小林太さんに、ご機嫌なミュート・トランペット・ソロを吹いてもらい、ともさんに特製の廃品で出来たドラムをたたいてもらった。エンディングでともさんがスティックを落として、スタジオの床に転がるところが、何度聴いても笑ってしまう。天性のパフォーマーとは彼のような人のことを言うのだと思う。 旅立つ秋 ■リアルタイムでは、ほとんどヒット曲しか知らなかった初期のユーミンだが、評価の高いセカンド・アルバムを聴いたのはごく最近。その中で一番好きになったのがこの曲だった。ほれぼれするほど、いい曲だと歌う度に思う。メロディと詞のはまり方が絶妙で、詞と曲を同じ人が書いていないと存在し得ない曲だし、歌い手にとっては表現のしがいのある曲。淋しげなシンセサイザーの音も、とても気に入っている。 Love Space
■「Episode
Vol.1」でカバーした「きぬずれ」は、アマチュア時代から歌っていたレパートリーだったが、この曲はソロになってから、ライブで試しに歌ったのが初めて。非常に評判が良く、今回収録することになったのだが、ソロをどうしようかと思い、下手に小細工するよりもどうせなら達郎バンドでご一緒させてもらっている土岐英史さんにサックスを吹いてもらおう、とお願いした。 Don't Go Breaking My Heart ■ソフト・ロックという日本で独特のポジションを得たジャンルの、一緒の代表作である「Roger Nichols
& The Small Circle
Of
Friends」。なかでも不思議な存在感を持つこの曲を、オリジナルのニュアンスをそのままにカバーしてみた。細かいパーカッションも自分でやってみると、より愛着が増すものだ。 週末の天使 ■バンド時代に書き、とても気に入っていたこの曲が当時、発表できなかったことは、ぼくにとってかなり大きな精神的痛手だった。時が流れ、ソロとしてのデビュー・シングルとしてこの曲が世に出たことは、本当にうれしかったし、結果としてこれで良かったと思っている。ライブでこの曲を何度も一緒に演奏してくれている山本公樹さんが、今回のために新たなアプローチでソロを吹いてくれた。イントロの雑踏の音は、「雨の中のオレンジ」でも使わせてもらった、夏秋くん録音のSE。 Sister Moon ■ぼくにとって、'80年代に大きな影響を受けた数少ないアーティストであるスティング。同じく当時、スティング・バンドのサックス・プレイヤー、ブランフォード・マルサリスに大きな影響を受けた山本公樹さんと二人で、思い切ってトライしてみた結果がこの曲、といっていいかもしれない。いかがなものでしょう。 Let's Call It "Love" 〜 Feel Like Makin' Love ■この曲も人気が高く、ぼく自身も気に入っている曲なので、一人で作り直してみた。ライブの時にメドレーにしていた、大好きな「Feel Like Makin' Love」を、そのままつなげて。「甘いLove Song」を「甘いMarvin Gaye」に変えたおまけに、"Let's Get It On"をワンフレーズ。 Border Song ■ゴスペル調のこの曲も、いったい自宅のピアノで何度歌っただろうか。一度こんな感じのコーラスと共に歌ってみたかった。そんな単純な夢を叶えたのが、このテイク。当時NHKで放送された「ヤング・ミュージック・ショー」で、オーケストラと一緒に演奏していた、若き日のエルトンの姿を思い浮かべながら。 Cliche ■エルトンと共に、音楽を始めた頃に最初に影響を受けたのがトッド・ラングレン。トッドの曲はたくさんカバーしているだが、その中でももっとも難しかったのがこの曲。独特のメロディと歌詞のはまり具合を何度も練習して、ようやく歌えるようになった。コーラスのアレンジも実に独特で、ほぼ原曲に忠実なものとなっている。 The Christmas Song ■クリスマス・シーズンになると数多くのクリスマス・ソングが街に流れる。クリスチャンでなくても、どの曲も心が弾み、歌で季節を感じることの喜びを味わえるのは幸せなことだ。この曲はかなり正統派のスタイルで歌ってみた。土岐英史さんのサックスはこれがTake 1(初めて演奏したテイク)とは信じられないぐらい完成されていて、何度聴いてもぞくぞくしてしまう。ソロのバックでピアノを弾くぼくまで、なんだかものすごくうまく聞こえてしまうところが音楽の不思議である。 Sing A Song For You ■東京についてふれた歌には、外からの視点の歌が多く、中にはひどく無神経な歌があり、そんな歌を聴くと実に不快な気分になる。そんな曲に対する、ぼくなりのアンチ・テーゼがこの曲だといってもいい。ぼくが生まれ育った家は今は、跡形もなく消え去ってしまったので、思い出がより純度を増してしまったのかもしれないけれど、いつも子供時代の幸せな思い出を、気持ちを込めて歌っている。そのためか、自分で作った歌なのに、涙腺がゆるむことも多い、大好きな歌である。 |
In Motion 全曲解説 [戻る]
esq
の(オフィシャルな形では)初のライブ・アルバム&ビデオ「In
Motion」はそもそも、ライブ・ビデオのみの企画だった。しかし実際にライブを収録してみると、これまでぼくが作ってきた音楽のベスト的な選曲、非常に充実したバンドの演奏、さらに自分自身の歌の完成度も高く、収録時間に限界のあるビデオのリリースだけでは惜しいと思いはじめ、全曲を収録したアルバムもリリースすることになった。 Disc-1 2.Ride on a bus 3.Evil eyes -悪意- 4.あいを しんじて 5.もっとそばに 6.2 o'clock samba 7.砂の上のBlues 8.逃亡 -Running out- 9.R.E.A.L. 10.Single Night 11.再会 12.Triste Disc-2 2.Going my way 3.黄金の日々 4.Make love 5.Supersonic 6.飛翔 -Fly away- 7.夜間飛行 8."I love you" song 9.Love goes on 10.Melody 11.One and only
実は'97年に2枚組ライブ・アルバムをリリースする企画があり、選曲を考え、曲を並べデモ・バージョンまで作ってあったのだが、もろもろの事情で頓挫した。しかし、結果的に今回が初めてのライブのリリースになったことは、本当に良かったと思っている。 |
Koo:kan 全曲解説
[戻る] 空間を彩る音 そして、空間のある音楽 音楽を聴くという行為、その喜びのひとつに、今この瞬間の空気の色を変えられる事がある。どんな場所、どんな状況にいても、好きな音を聴くだけで、空気を変化させることができる。素晴らしい音楽は、空間の居心地を左右する不思議な力を持っている。 そして、その音楽の中で心地よい空間を感じるためには、音楽そのものにも十分な空間がなければいけない。美しい一脚の椅子があった時、その美しさを感じることのできるだけの、十分なスペースが必要なように。美しいデザインを描く時、そのデザインを味わうことのできる、十分な余白が必要なように。 今巷に溢れている音楽は、情報量が多く、みっちりと詰まり過ぎていて、余白、空間などという概念すら見えてこない。もっともっと余白の多い、空間の多いサウンドが必要なのだ。 そんなふたつの「空間」という意味を込めて、「Koo:kan」はできあがりました。皆さんにとってこの作品が、心地よい空間を感じさせるものとなれば、とてもうれしく思います。 1.I think I love you アルバムのための作品づくりが順調に進んでいくと、自然とアルバム1曲目が決まってくる。この曲もできた瞬間に、今回のアルバムの1曲目にふさわしい曲はこれだ、という確信が生まれた。青山純、伊藤広規の実に独特なイントネーションを持つリズム・セクションがほんとうに心地よく、佐橋佳幸のアコースティック・ギターの流れるようなストローク、そしてエリック宮城の、ハイノート・ヒッターにも関わらず、優しく柔らかなフリューゲルホーンのソロがこの曲の心地よさをより高めてくれた。 2.こんな夜は きっと以前なら、こういう形でこの曲をアルバムの2曲目にしようとは思わなかっただろう。そして以前なら、アレンジとしてもう少し筆を進めるところだろうが、その一歩手前で筆を置けるようになったところが今回のアルバムの、自分なりの成長なのかな、と思う。何より土岐英史のサックスが素晴らしく、こういう形でフィーチャーできる事も、ぼくなりのこの数年の収穫だと思っている。 3.Timeless traveler 毎日毎日様々な事件、出来事が起こる中で、北朝鮮拉致被害者の帰国、その一連の報道は衝撃的なニュースだった。ある日突然何の理由もなく、普通の人々が見も知らぬ世界に連れ去られ、未来を閉ざされてしまう。そして何十年ぶりに突然呼び戻され、帰国した祖国は、想像すらできないような世界に変わっていた。それはまるでSF、それも悪夢のようなタイムトラベルが、現実に起こったかのようだ。さらにぼくにとってこの事件がリアルだったのは、連れ去られた彼らが自分と同じロック世代だったということだ。 夏秋文尚、BARAの重厚なリズム・セクションに加え、飯塚昌明の素晴らしいギター・ソロを味わって欲しい。特にエンディングにかけては本当に見事だと思う。 4.Struttin' イントロのシンセサイザーのフレーズを思いついたことで、この曲は始まった。まさに最新型のesq の世界を表現できたこの曲こそ、今回のシングルにふさわしいはずだ。ボーカルのスタイルとしても、自分の新しい表現を広げられたのではないかと思っている。 音楽雑誌の付録CD に収録されていた、西脇辰弥のハーモニカを初めて聴き、心から驚き、面識がないのにも関わらずいきなりメールで参加をお願いした。快諾していただき、レコーディングしたそのソロは、ぼくが思い描いていたこの曲のソロの世界そのもので、素晴らしい出来となった。今回のアルバムにおける、一番うれしいハプニングだった。 5.この手をとって この辺でesq の定番の世界のラブソングを1曲。山口ともの軽やかなコンガ、飯塚昌明のセクシーなギターソロ、山本公樹のホットなアルトサックスが、この、ささやかな幸せを分かち合う歌にぴったりの暖かな世界を表現してくれている。 6.Rainbow アメリカとイギリスの中間地点に着地するようなサウンドを目指した。esq としては珍しいタイプの曲。佐橋佳幸のスライド・ギターをフィーチャーしたいと、この曲を作っている時から思い描いていた。12弦のリズム・ギターも含め、本当に素晴らしいギターを弾いてくれた彼に感謝しています。アコーディオンもつたないながら自分で弾いてみて、良い感じになった。 7.愛よ何処へ 全編に流れる、不思議な浮遊感のあるシンセサイザーの音色がすべての始まりだった。esq のレギュラー・リズム・セクション(夏秋文尚、BARA)の独自性、ソリッドな良さが発揮されたナンバー。この曲もソロ・アーティストになってからの、定番となった世界観の曲だと思う。 コーラスも含め、こういう世界はぼくにしか表現できないと、自負しています。 8.Saturday In The Park (A Cappella) Chicago の'72年のヒット曲。ぼくが13歳になるこの年は、洋楽に本格的に出逢った年であり、この時代に聴いたアメリカのヒット曲はすべて、ぼくの音楽的土台となっている。その中でも大好きな1曲であり、2002年のesq's Piano Bar で取り上げ、その中でひょっとしたらアカペラにできるかもと思いついた。 この曲を聴くたびに「自由」という言葉の本来の意味を強烈に感じ、この自由な気分が今の世界の至るところに存在したら、世界はどんなにHappy になれるんだろう、と思う。 9.Boy Meets Girl Stardust Revue、'84年「Thank You」収録曲のセルフ・カバー。スタレビ時代の曲を1曲セレクトする基準は、今の気分というのもあるし、そのアルバムに足りない色をその曲で補えればという部分も大きい。 ストレートに歌の良さを伝えられ、ライブでのあの風通しのよい感じが欲しかったので、最小限の音で歌ってみた。こういうアレンジはテンポやニュアンス、タイミングが何より重要なので、歌とギターの一発録りでレコーディングを行ったが、さすがに佐橋佳幸のギターは素晴らしく、2度目のテイクでOKになる。 10.Always 春に始まって、冬で終わる。意識したわけではないのだが、そんな流れも感じてもらえるような曲順になった。これもesq としては定番的な曲だと思う。 夏秋文尚のタムが力強く、山本公樹の柔らかなソプラノサックス、そして山口ともの、曲のエンディングに向けてニュアンスが少しずつクレッシェンドしていく、繊細なパーカッションが素晴らしい。 ソロとして10枚目、純粋なオリジナル・アルバムとしては2000年の「Tailor-made」以来3年ぶりになる今回のアルバム。思わぬ時間がかかってしまったが、この3年間は自分のソロだけではなく、様々な活動を並行して行いながら、音楽を聴く意味、音楽をつくる喜び、そうした根源的な事を考える事の多い、苦しくも実りの多い時期だった。 どんなアーティストでも、キャリアを積んでいくうちに、これまでの作品を自分の中で超えるにはどうしたらいいか、悩み苦しむものだと思うのだが、ぼく自身も曲作りのスランプから脱するのがとても長くかかってしまった。 とにかく自分がまず納得できる曲、感動できるものを作ることがこれほど難しいと思ったのは初めてで、そのせいでレコーディングも断続的にではあるが半年間もかかってしまった。しかしようやく自分として目指していたレベルまで達することができた新作がこうしてリリースできたことは、本当にうれしい。 また今回のレコーディングをすべて、サンプリング周波数 24bit/96khz という、現在のCD フォーマットの倍以上の環境で行った事もとても大きな事だった。最終的なフォーマットがCD になるにしても、そのハイ・クオリティなサウンドは最終形の姿にも大きく影響したし、レコーディング時におけるモチベーションを高めるのにも大きな役に立った。 皆さんにとって、この「Koo:kan」が、心地よい時間を過ごすための音楽になってくれたら、と願っています。 esq 三谷泰弘 Struttin' 全曲解説 [戻る] 1.Struttin' アルバムの同曲コメントを参照してください。 2.You're my girl アルバム用の曲作りで、最初の頃にできあがり、ずっとアルバムに入れようと思いレコーディングしていたのだが、他の収録曲が揃ってくるにつれてこの曲だけちょっと以前のesq のスタイルに思えてきて、アルバムからはずし、シングルのカップリングに収録した。 3.Marlene 「Episode Vol.2」「Episode Vol.3」のレコーディング時にもたくさんのアウトテイクが生まれたが、今回収録したのはその中から2曲。まずはTodd Rundgren、"Something/Anything?" 収録曲のピアノ弾き語りでのカバー。 いかにもトッドらしい摩訶不思議なコード進行に、とにかく愛らしい歌詞のコンビネーションがとても可愛らしく、昔から大好きな曲。エンディングに向けてどんどんコーラスの音程が高くなっていくところも、独特のユーモア感覚があり好きなので、同じような感じで再現してみた。 4.You And I 「Episode Vol.2」「Episode Vol.3」のレコーディングのアウトテイクから。Stardust Revue、'85年「Voice」収録曲のセルフ・カバー。この曲は発表時点からファンが多く、スタレビ初期の三谷ボーカル曲の出発点になった感がある。 オリジナルは曲やアレンジはともかく、現在の耳で聴くと歌が若いので(まぁ、それがいいという人もいると思いますが)、今のボーカルで残せたのは良かったと思っている。 |