嘉門達夫さんの「アカペラな夜」という楽曲のアレンジについて、ファンの方から質問がありましたので、ぼくの記憶を思い起こして、この場で書いておきます。
元々嘉門達夫さんと根本要さんは個人的にも仲が良く、その流れで嘉門さんのオリジナル楽曲へのアカペラ・アレンジをお願いしたい、という依頼がありました。
ぼくらは1990年代当時、主にステージでアカペラをやっていましたが、皆さんよくご存じの通り、当時のスタレビは本来、あくまで演奏し歌う、いわゆるヴォーカル&インストルメンタル・グループとしての活動や音楽的方向性が本来のスタイルでした。
自分たちのステージやアルバムの一部としてアカペラを聴いてもらう分には問題はないですが、他のアーティストのアレンジなどを担当するとなると、いわゆるアカペラ専門のヴォーカル・グループとして捉えられる危険性があり、その当時のスタレビの音楽的方向性や、ぼくら自身のアーティスト・イメージにとって、あまり得策ではないように思う、と発言しました。
また、その時聞かせてもらったデモが、アカペラで典型的に用いられる擬音的なサウンドを使って言葉遊びしているような内容で、ぼくの中ではコミック・ソングとして捉えられましたので、ぼくは個人的に、アカペラをそういう形で表現することに抵抗を感じました。
そこで、こういう形でアカペラ・アレンジに参加するには、(当時の)スタレビの方向性とは異なるのではないかと思う、という事をミーティングで発言し、メンバー、スタッフと共に協議した結果、この話はお断りするのが良いのではないか、という結論に至りました。
しかし、要さんと嘉門さんの友人関係から、アレンジの依頼を断りづらかったのか、嘉門さんサイドから要さんに直接、再度要請されたのか、正確なところはぼくは知りませんが、結果的にバンドではなく、要さんが個人的に嘉門さんをサポートする形で、その曲がレコーディングされたという経緯だったと認識しています。
要さんは面白おかしく、以前のことを脚色して話す癖がありますので、事実とは異なる事が多々あることは、スタレビファンの皆さんならよくご存じかと思います。
いちいち、あの時は実はこうだった、などと、異議を唱える事も今更大人げないとは思いますが、なんだか話が変な風にねじ曲がって伝わるのもあまり気分の良くない事なので、一応この場でぼくの覚えている経緯を書いておきます。
三谷泰弘